アレルギー科とは
アレルギー科はアレルギー物質によって引き起こされる疾患や症状を診療する科です。
アレルギーとは、免疫システムが本来無害な物質(花粉や食物など)に対して過剰に反応し、体内で異常な反応を引き起こす状態を指します。
次のような疾患や症状に対して診療を行っています
主な治療疾患
食物アレルギー、花粉症、アレルギー性鼻炎、気管支喘息、じんましん など
症状によっては呼吸器内科、小児科、耳鼻咽喉科、眼科などと連携をとりながら治療を行うことが必要となります。
当院で行っている検査
- 特異的IgE検査(採血)
- ドロップスクリーン(少量の血液でできるアレルギー検査)
① 花粉症とは
花粉がアレルゲンとなって引き起こされるアレルギー症状を「花粉症」といいます。花粉症の原因となる花粉としては、スギやヒノキなどの春先に飛散するものが広く知られていますが、初夏や秋に飛散するイネ科の植物、ヨモギ、ブタクサなどもアレルゲンとなることがあります。そのため、花粉の飛散時期に合わせて症状が現れることが多いですが、いずれも季節限定の症状です。
主な症状としては、鼻の粘膜や結膜に花粉が付着することで、くしゃみ、鼻水、鼻づまりといったアレルギー性鼻炎の症状が現れるほか、目の充血、かゆみ、流涙などのアレルギー性結膜炎の症状も見られます。また、喉のかゆみ、痰が出ない咳、肌荒れ(花粉皮膚炎)などの症状が出ることもあります。
診断は、患者さんの症状や訴えをもとに行うことが多いですが、アレルゲンの特定を目的とした血液検査が行われることもあります。
対症療法としては、鼻づまりや目のかゆみなどの辛い症状には、抗ヒスタミン薬や抗ロイコトリエン薬といった内服薬が使用されます。鼻づまりが特に強い場合には、鼻噴霧用ステロイド薬が、眼の症状には抗ヒスタミンやステロイド系の点眼薬が用いられます。
舌下免疫療法について
当院ではスギ花粉症とダニアレルギーについて舌下免疫療法を取り扱っております。
舌下免疫療法とは、毎日少量のアレルゲンを体内に吸収させ、アレルギー反応を弱めていく治療です。3年から5年間継続して毎日舌下よりアレルゲンを吸収させます。保険診療にて治療が行えますが、気長に治療をすることが必要となります。
現在スギ花粉に対するものとダニアレルギーに対する舌下免疫療法が存在します。
スギ花粉症
シダキュアとは
シダキュアは、スギ花粉を原料とするエキスから作られているスギ花粉症のアレルゲン免疫のお薬で、少量から服用することで体がアレルゲンに慣れて免疫機能が過剰反応しなくなるため、アレルギー症状(スギ花粉症症状)が出にくくなる効果が期待されます。
注意点
- 服用開始前に、スギ花粉症の確定診断が必要です。(2年以内)
- アレルギー症状が出ていない場合でも、毎日、長期間継続して内服する必要があります。
- 舌下免疫療法は1日1回1錠を舌下にて1分間保持し内服するお薬です。
- 舌下保持が可能なお子様であれば、約5~6歳から治療を開始できます。
- 花粉が飛んでいる時期(1月中旬から5月まで)には、治療を開始することはできません。
※この時期はアレルゲンに対する体の反応性が過敏になっているため、シダキュアを服用すると症状が悪化するおそれがあります。
治療を受けられない方
- 過去にシダキュアでショック等を起こしたことのある方
- 喘息の方(症状のひどい)心疾患・肺疾患・自己免疫疾患・悪性腫瘍など
ダニアレルギー
ミティキュアとは
ミティキュアは、ダニを原料とするエキスから作られているダニによるアレルギー性鼻炎のお薬で、少量から服用することで体がアレルゲンに慣れて免疫機能が過剰反応しなくなるため、ダニによるアレルギー症状(アレルギー性鼻炎)が出にくくなる効果が期待されます。
※ミティキュアは、開始時期に特に制限はありません。いつでも始めることができます。
注意点
- 服用開始前に、ダニによるアレルギー性鼻炎の確定診断が必要です。(2年以内)
- アレルギー症状が出ていない場合でも、毎日、長期間継続して内服する必要があります。
- 舌下免疫療法は1日1回1錠を舌下にて1分間保持し内服するお薬です。
- 舌下保持が可能なお子様であれば、約5~6歳から治療を開始できます。
治療を受けられない方
- 過去にミティキュアでショック等を起こしたことのある方
- 喘息の方(症状のひどい)心疾患・肺疾患・自己免疫疾患・悪性腫瘍など
スギ花粉症とダニアレルギーの舌下免疫療法併用治療
スギ花粉症とダニアレルギー性鼻炎は、どちらか一方だけでなく、スギ花粉とダニの両方にアレルギー症状が出る方もいます。その場合は、服用するお薬はそれぞれ異なりますが、同時に治療を行うことも可能です。
② アレルギー性鼻炎とは
鼻の粘膜にアレルゲン(ハウスダスト、花粉、真菌、ペットの毛など)が付着し、それに対してアレルギー反応が起きる状態を「アレルギー性鼻炎」と呼びます。この疾患は、アレルゲンが1年を通じて存在し、症状が年間を通して続く場合を「通年性アレルギー性鼻炎」、花粉などの季節性アレルゲンによって発症する場合を「季節性アレルギー性鼻炎」と分類します。
主な症状としては、くしゃみ、鼻水、鼻づまりが一般的ですが、鼻の付け根に疼痛がある場合や嗅覚の低下が見られることもあります。
治療については、特定されたアレルゲンを避けるための環境調整が基本となります。その上で、症状を軽減するためには、抗ヒスタミン薬や抗ロイコトリエン薬などの内服薬が用いられます。鼻づまりが特に強い場合には、鼻噴霧用のステロイド薬も使用されます。
③ 食物アレルギーとは
ある食べ物がアレルゲンとなり、さまざまなアレルギー症状が現れる状態を「食物アレルギー」といいます。特に赤ちゃんや幼児に多く見られ、乳幼児期には鶏卵、小麦、乳製品などが原因となることが多いです。学童期以降になると、甲殻類(エビ、カニなど)、ナッツ類、魚類、果物、そばなどがアレルゲンとなることが一般的です。
主な症状としては、じんましん、喘息、腹痛、嘔吐、下痢、咳、息苦しさ、チアノーゼ、鼻水・鼻づまりなどが挙げられます。また、複数の臓器にわたるアレルギー反応や、生命に危険を及ぼすような症状が見られる場合は「アナフィラキシー」と診断されます。さらに、血圧低下や意識障害を伴う場合は「アナフィラキシーショック」となり、緊急の対応が必要です。
診断には、IgE抗体の量を測定する血液検査などが行われます。また、医師の指導のもとでアレルゲンが疑われる食物を少量ずつ摂取し、アレルギー症状の有無を確認する「食物経口負荷試験」を行うこともあります。
治療には、アレルゲンとなる食物を特定し、それを避けることが基本です。この際には、除去が必要な食物については最小限にし、医師や栄養士による適切な栄養指導を受けることが推奨されます。
また、アナフィラキシーを何度も経験している場合には、緊急時に使用するためにアドレナリン自己注射(エピペン)を常に携帯し、適切に対処できるようにしておくことが重要です。
④ じんましんとは
何らかのアレルギー反応によってかゆみを伴う円形や楕円形、地図状などの形をした赤くはっきりした皮膚の盛り上がり(膨疹)が現れるのがじんましんです。膨疹は、基本的に数時間から24時間で自然に消失しますが、何度も膨疹が繰り返して出現することがあります。1か月以内に治癒する急性じんましんと1か月以上つづく慢性じんましんがあります。
じんましんの原因には、特定できる場合とできない場合があります。約7割のじんましんは原因の特定が難しいとされています。発汗、温度、ストレスが原因といわれているコリン作動性じんましんというタイプのじんましんやクインケ浮腫といって瞼や唇が急に腫れるタイプのじんましん、小麦や甲殻類を食べたあとに運動をすることによって引き起こされる食物依存性運動誘発性アナフィラキシーという病型などもあります。
口腔アレルギー症候群といって特定の食物を接種後、口の中の刺激感や喉の奥の閉塞感を感じ、じんましんや喘息、アナフィラキシーなどの症状を起こす疾患もじんましんの1種といわれています。花粉症、気管支喘息、アトピー性皮膚炎の方に多く、特定の食べ物はとくにリンゴ、桃、メロン、ナシ、ビワ、サクランボ、キウイ、トマトなどの果物が多いといわれています。
治療は基本的に抗ヒスタミン薬の内服となります。はっきりとした原因がある場合はそのアレルゲンの除去が必要です。症状がつよい場合にはH2ブロッカーや内服のステロイド、生物学的製剤などが適応になる場合もあります。
⑤ 気管支喘息とは
気管支喘息は空気の通り道に炎症が続き、様々な刺激に気道が敏感になって発作的に気道が狭くなることを繰り返す病気です。
アレルギーが原因で引き起こされることが多く、アレルゲン(花粉やハウスダストなど)によって気管支に慢性的な炎症が生じます。この炎症によって気道が狭くなり、呼吸が困難になる状態が続きます。原因物質が特定できないこともしばしばあります。
主な症状には、喘鳴(ゼーゼーやヒューヒューといった呼吸音:特に息を吐くのがつらくなる)、全身を使わなければ息苦しさを感じる、咳が一度出始めると止まらないなどがあります。発作は、夜間から明け方にかけて起こることが多いです。
治療には、まずアレルゲンを特定し、それを避けるための環境整備が重要です(例えば、ハウスダストが原因であれば、定期的な掃除などが必要です)。その上で、喘息に対する治療を行います。治療薬は吸入ステロイド、長時間作用型抗コリン薬、長時間作用型β2刺激薬、ロイコトリエン受容体拮抗薬などを適切に使用していきます。
たばこや飲酒は気管支喘息の増悪因子なのでできるだけ控えましょう。